相変わらず読んでいる内田さん。対談本なので、さらさらと読める。そしてやっぱり内田さんの思想の根底にある優しさ、温かさにじんわりする。タイトルにある「贈与」ということの実践に静かに感動を覚える。岡田さんがいろんな角度から意見を投げても、ゆるがないものがどっしりとある。何度も内田さんの講演に行ったが、内田さんは、わりに軽妙な雰囲気で、ニコニコされている。
抜粋――これからの日本を担ってゆくことになる若い世代に対して先行世代に課せられた使命は「敬意を持ってできるだけ親切にする」親切って使ったら目減りするものじゃないから。親切にすればするほど、親切の総量は増えてゆく。(中略)「自分は貧しいけれど、もっと困っている人もいるから、その人に何かしてあげよう」と思う人もいる。だから客観的条件じゃなくて主観的な決断なんです。自分が他人からな何かしてもらえるかより先に、自分が他人に何をしてあげられるかを考える人間だけに贈与のサイクルに参入できる。それは、その人の貧富とか社会的地位の高低とは全く関係がないことなんです。「まずはオレの努力と才能に相応しい報酬をよこせ、話しはそれからだ」という人には永遠に贈与のロジックはわからない。――